脳深部電気刺激療法(Deep Brain Stimulation)
パーキンソン病は、脳の深部でドパミン神経細胞が少なくなって起こる病気です。その原因は、未だに不明な点が多く、神経難病に指定されています。 初めのうちは、手足の震えや固さが目立ちます。これらの症状に対して、ドパミン神経細胞の働きを補うために、L- DOPAと呼ばれる薬やL-DOPAの働きを助ける様々な薬が使われ、非常に良い効果をもたらします。
現在では、薬による治療の進歩によって、パーキンソン病の患者さんの寿命も延び、平均寿命が76才との報告もあり、日本人男子の平均である77~78才と大差のないところまで改善しています。
しかし、患者さんの中には、薬を続けているにも係わらず、その効果が弱まり、時間の経過とともに次第に動きにくさ (特に歩行困難) が目立ちはじめ、転倒しやすくなったり、或いは、薬の副作用が現れて十分な量の薬が使えなくなったりする方がいらっしゃいます。薬の効き具合に波があるために、急に効果が切れて玄関までの数メートルの距離を歩くのに20分もかかったり、薬を飲んだ後に手足に不快な異常運動が出たり、時には幻覚に悩まされたりすることさえあります。
通常、薬の量・種類・服用の回数などを工夫し、こういった変化に対応していきますが、なかなか薬だけでは十分な効果が得られない患者さんもいらっしゃいます。
当院では、このようなパーキンソン病の患者さんに対して、脳の深部に電極を埋め込み、微弱な電気刺激を加えて症状をコントロールする治療を行っています。脳深部電気刺激療法と呼ばれる治療です。
治療の概略は下のような流れになります。
外来評価:
治療を希望される患者さんに、まず、治療について十分に説明致します。治療の希望が固まった段階で、外来での総合的な評価を行います。
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入院・術前検査:
手術の日程について、ご希望を伺い、それに基づいて入院の日程を組みます。入院後、必要な術前検査を受けていただきます。
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電極の埋め込み手術:
最初の手術は、脳深部に電極を留置する手術で局所麻酔で行います。
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試験刺激:
その後、数日から一週間程度かけて治療効果を確認する試験刺激を行います。
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刺激発生装置の埋め込み手術:
刺激(パルス)発生装置を胸の皮下に留置する手術を、全身麻酔をかけて行います。
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刺激条件の設定:
刺激強度、パルス幅、刺激の頻度、刺激の極性などを考慮し、適切な刺激の条件を設定します。
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退院:
手術の傷が癒え、刺激の条件が決まれば、いよいよ退院です。全体の入院期間は、3~4週間程度とお考え下さい。もちろん、患者さんによって病状が異なりますので、リハビリの希望があれば、入院期間がこれよりも長くなることもあります。